家に帰りたい。
ただ一つ、それが父のずっと思い続けてきた望みだった。
先々週、危篤のような状態の中、差し迫ってくるお通夜やお葬式。家族でも何度も話し合った。
母が一番気にしたのは、なんとかして【せめて葬儀場に行く前に少しでも家に戻って来れないか】ということ。
葬儀社になんとかお願いしていたことは、生きてる間にはもう叶わないと思っていたから。

でも、神戸へ戻る前。
明らかに良くなっていく父の様子に欲がわく。
先週のレントゲン検査の結果が良好とわかったとき、先生にこれだけは聞こうと思っていた。
🍎「先生、もしも、もしも万が一…」
👨?
🍎「肺炎がこのまま良くなって、少し状態が落ち着いてきたら…」
👨「はい」
🍎「一瞬でもいいから、家に帰ることは可能なんでしょうか?」
👨「え?」
🍎「あの…30分でも、1時間でもいいんです!」
👨!
🍎「生きている間に、父が家に帰るということは(現実的に)可能なことなんでしょうか?」

👨「それは可能です」
🍎「え!」
激震。思わず、母達と顔を見合わせた。
👨「私の判断になります」
👨「お父さん、今の経過であれば、もう少し肺炎が治って状態が落ち着いたら、少しの間だけお家へ戻られるのは可能ですよ」
一昨日の嚥下検査の結果告知の時でも、先生や地域連携の社会福祉士さんのOKももらえているらしい。
お父さんの頑張ってきた【生きる】。
たいせないのち。
どうか最後の願いごと、叶えられたなら。
かおりん